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2010年 05月 03日

伊藤礼『自転車ぎこぎこ』

c0155474_220487.jpg伊藤礼さんの『自転車ぎこぎこ』(平凡社 2009年11月刊)を読む。このひとの前作の『こぐこぐ自転車』がすこぶるおもしろく、自転車シリーズ第2弾を待ち望んでいたのである。

伊藤礼氏は、1933年東京生まれなので、御年77歳。若いころから肝臓病をわずらっていたのだが、医学の進歩で60をすぎたときに持病が引っ込んで、道路を歩いていてもフラフラしなくなったことから、フト、自転車に乗ってみようかと思い立つ。定年間近になって勤め先の大学まで自転車通勤をはじめ、最初は2kmでネを上げたけれど、そのうちに5km、12kmと距離を伸ばし、杉並区から虎ノ門のお医者さんにも自転車で通い、ついには北海道自転車旅行なんかをやっちゃうようになった老サイクリストなのであります。

この本は、そんな伊藤さんの自転車修業のころを振り返ったエッセイやら、年末に都心に漕ぎ出した話、大枚はたいてヘリオスSLというダホン社製の高級折り畳み式自転車を買って浮かれまくった話、ヘルメットや鍵、スピードメーターなどについての考察、房州や笹子、三河、山陰などへの、知人たちと走った話などを1冊にまとめたもの。

とにかく話がめちゃおもしろい。nuts-coさんとesikoさんを足して2で割ったような按配であります。洒脱で、食べることが大好きで、ちょっぴり皮肉屋で好奇心いっぱいで、いくつになっても、おもしろいことを見つけるのが楽しくてたまらない・・・といった文章で、ページを繰りながら、こちとらまで笑みがこぼれてしまう。泣いちゃう本もキケンだけど、ときどき吹き出してしまうから、吹き出さないまでもニヤニヤしてしまって、この本もまた電車のなかで読むのはちょっとキケンだよ。

ちょっと引用してみると。
たとえば、初めて自転車に乗ったころ、筋肉もまるでなくて、往生した話のなかで・・・・

もっとすごいのはお尻の痛さだった。上半身の重量がサドルのお尻の肉に伸しかかると、お尻の肉は臼のなかの餅のようにこねくりまわされてぐちゃぐちゃになり、最後にサドルの上にあるのは尻の皮と骨盤だけになってしまうのであった。肉はどこか横のほうにどいてしまうのだ。そうなったときの痛さ辛さは格別で、乗るたびにこういうことになるのなら,もう自転車は不可能であると私は知ったのであった。

あるいは出雲大社に行ったときの話。

進んでゆくとますます門前町らしくなってきた。とは言うものの、門前町と言っても信州長野の善光寺のように大々的ではない。善光寺とくらべるとずっとささやかだ。善光寺が大関だとするとこちらは序二段ぐらいだ。なぜかと考える。原因が分かった。現代は神様よりも仏様が幅をきかせているからだ。お寺は葬式をやるからずっと景気が良い。仏様はトンカツやマグロのトロを食べて脂ぎってぷくぷく太っているが、神様は結婚式ぐらいだからせいぜいお神酒を飲むぐらいだ。だから神様に頼っているらしいこの町もあまり余裕がないように見えた。長野の町にくらべると虫の息同様だ。

てな具合。
タイトルを観るだけでもおもしろそうだよ。

ダイエットで頭がこんぐらがったこと
女子高校生と自転車のカギの問題
カルピスの原液を飲んでしまったこと・・・エトセトラ

ところで私はこの本でいくつか雑学も仕入れた。そのひとつ。九十九里浜は海岸線が長いからだろうと思っていたんだけど、実はこのあたりの白里という地名に由来するのだという。白=百-一。つまり、歌の下手な人を犬吠というのと同じなのである。(犬吠は銚子の外れにある)

こんなふうに紹介していたらキリがないよね。
この本を読むと、私だって自転車で深大寺でも、駒場の日本民芸館あたりに行くのもわけないなって感じがしちゃう。どこか遠くに自転車をこいでいきたくなる。あっ、でも同好の士を募らなくては・・。

関係ないけど、伊藤礼さんのお父さんはあの伊藤整。
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D40+カラスコ20

自転車修行三題
歳末東京三題
ヘリオスSL三題
自転車各論
房州
笹子峠
早春遠州三河自転車膝栗毛
春爛慢山陰サイクリング

by sustena | 2010-05-03 16:55 | 読んだ本のこと | Comments(9)
Commented by Lucian at 2010-05-03 22:12 x
今日久しぶりにママチャリに乗ってみました。
平地や下り坂は快適だけど上り坂が応えました。
坂がなければ遠出もできそうなんですが。
Commented by nuts-co at 2010-05-03 22:21 x
こりゃ、読まねばなあ。サドルの上のお肉が横にどいてしまう話など、ほんといい呼吸の文章。sustenaさんの生活が、演劇と展覧会と本と旅とおいしいものと息子と息子で満ちているさまは、素敵です。それを合計すると170%くらいになりそうだ。
Commented by esiko1837 at 2010-05-04 10:56
面白そうですね。
こういうの大好きな友人がいるので、教えようと思います。
50ccのバイクは時々乗りますが、自転車は20年以上も乗っていません。
小学生の頃、買ってもらったばかりの自転車に乗ったまま川に落下したことがあって、あの時の親の対応が今でも忘れられません。
「せっかく無理して買って上げたのに」と、自転車がダメになったのだけを惜しんでいました。
Commented by esiko1837 at 2010-05-04 11:01
図書館の蔵書検索をしてみたら、「こぐこぐ自転車」だけがあったので、そちらから読んでみることにします。
Commented by sustena at 2010-05-05 09:52
Lucianさん、私はママチャリは卒業しようとスマートな自転車を買ったのですが、小さい前カゴしかなく、買い物では不便をかこっています。息子のママチャリは変速機つきでとても頑丈で、大量の買い物のときは、こちらを借りてます。
Commented by sustena at 2010-05-05 09:54
nuts-coさん、この本を読んだら、遠出したくなりますよ~。今年の私のGWは、けっこう活動的でありました。本日は休養日。
Commented by sustena at 2010-05-05 09:55
esikoさん、「こぐこぐ自転車」も超オススメです!
Commented by higphotos at 2010-05-05 15:12
しっかり立体感がありますねぇ。
優しい色だし、良い雰囲気です。
カラスコ20はカラーも上出来。
Commented by sustena at 2010-05-06 00:00
うれしいな♪ ピンボケ写真を量産してたんですけど、これは、ジャスピンではないけれど、やさしげに撮れたので結構気に入ったんです~。


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