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2010年 04月 07日

大島 真寿美『戦友の恋』

c0155474_9221291.jpgあっ、ヤバッ涙が出てしまう・・・と思いながら、それでもページを繰ることを止められなかった。大島真寿美の連作短編集『戦友の恋』(角川書店 2009年11月刊)は、中年女が電車の中で読むには、あまりにもキケンな小説なのであった。

大学を卒業後、漫画家を志望してバイトで食いつないで生活している山本あかねに、絵のセンスがからきしないから原作者の道を歩めと、編集者の石堂玖美子は声をかける。そういう玖美子も駆け出しの編集者で、まだ担当を持っていない。言っちゃあなんだけど、こんなチャンス二度と来ないわよ。あたし以外だあれも面白いと思わなかったんだから。あなた、あたしと組むしかないのよ。ね、センスの合う新人同士、いっしょに頑張ろうよ・・・・こうしてあかねは、玖美子と組むことになった。山本佐紀というペンネームを決めてもらって。

二人は、酒を飲みながらアイデアを出し合い、漫画の話や子どものころの話や宇宙の話や、女の独り暮らしにまつわる悲喜こもごもの話までしゃべりにしゃべり、そこから書くものの方向性が決まり・・・と、次第に一人前の編集者と原作者となってゆく。「友人」という言葉では二人の関係は語れない。いってみれば戦友。

こうして20代が怒濤のように過ぎ、互いに恋も失恋も経験し、30代も半ばになって、突然玖美子が、帰らぬ人となる。

そう、タイトルとはうらはらに、連作短編の第一話の真ん中くらいで、さっさと戦友は死んでしまい、佐紀は大きな喪失感を抱えて生きることになる。といっても、生活は否応なしに押し寄せてきて、佐紀は玖美子とのたくさんの思い出に押しつぶされて息ができなくなってしまわないように、必死に記憶の蓋を閉め、頑張って忘れようとする。
そんな佐紀が、玖美子が愛した男の息子のワタルくんと出会うのが第一話の「戦友の恋」。じわーんとくる。

第2話以降は、残された者たちの再生がテーマである。玖美子の仕事を引き継いだ、一見ジコチューの編集者・君津に尻を叩かれ、佐紀は仕事も続けていく(このオトコが実にいいキャラ)。

「夜中の焼肉」「かわいい娘」「レイン」「すこやかな日々」と、少しずつ登場人物が入れ代わりながら、たんたんと1年、1年が過ぎていく。

途中、スランプを乗り越えた佐紀が、玖美子と昔よく通ったライブハウスのオーナーの律子から「長い長い喪中だった」と言われるシーンなどは実にいい。

作者の大島真寿美さんは、1962年愛知県生れ。1992年「春の手品師」で文學界新人賞を受賞しデビューしたひと。あれあれ、人生のたそがれを語るには、登場人物たちはまだまだ若いぞっと、場面もあちこちにあるんだけど、30をすぎたらまるで老後みたいなことを言うひとだらけだから、まぁ無理もないか。

少しずつ喪失感と折り合っていかなきゃいけないトシだな、と思いながら読み終えたことだった。
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ハナカイドウもまっ盛り。

by sustena | 2010-04-07 09:22 | 読んだ本のこと | Comments(5)
Commented by Lucian at 2010-04-10 21:43 x
電車で読むのがキケンな本といえば、自分的にはリリー・フランキーさんの「東京タワー」でした。
Commented by sustena at 2010-04-12 21:04
東京タワーは読む前にいろんな情報がワッと入ってきて、結局読む雰囲気にならずに、きてしまいました。夜中にこっそり読んでみることにしようっと。
Commented at 2010-04-12 21:42 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by sustena at 2010-04-12 21:46
私の中のLucianさん像とダブる面と、ビミョーに修正を迫ってくる面とあって、意外な思いとそうだろうなという気がして,半分オドロキました。
Commented by 藍色 at 2011-06-02 01:47 x
こんにちは。同じ本の感想記事を
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