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2009年 12月 26日

歌舞伎座さよなら公演「12月大歌舞伎」

12月の歌舞伎座の公演は、昼の部は宮藤官九郎、夜の部は野田秀樹の脚本・演出と、師走らしい華のある演目だった。

クドカンの「大江戸りびんぐでっど」は、ゾンビが出てハケン労働をするという趣向という話だけが伝わってきて、朝日の投書に、「実にケシカラン、派遣をバカにするにもほどがある、生れて初めて途中で席を立った」、なんて苦情が載ったり、高名な批評家が「私にはちんぷんかんぷん,面白さがワカラナイ」とのたまったなどというウワサばかりがかしましく、いったいどんなオモチャ箱をひっくり返したような話なのだろうと思ったら、なんの、存外まともなんである。というより、道具立ては人を驚かしてるけど、人間関係は古風。クドカンのテレビドラマ「タイガー&ドラゴン」なんかも、実に上手に落語の世界を現代と二重写しにしていたっけ。

こういう新作となると、なんだかみんなテンションがハイになってしまうようなのである。ゾンビ役筆頭?の与兵衛を演じた亀蔵など、踊りもうまいし、実にイキイキしてた。剣術使いの浪人の四十郎役の三津五郎は、チョーかっこよかった。ま、もう一回観たいかといわれると、もうおなかがいっぱいだけど。

一方の野田の「鼠小僧」は再演である。一度DVDで見て以来、これを生の舞台で観たいなぁと思っていて、念願がかなったのであります。アイーダはメッセージばかりが強くて、ドラマは空回りしてた感じがあるけど、この「鼠小僧」や「研ぎ辰」は歌舞伎の昔からの積み重ねのすぐれた身体性と舞台づくりと,野田の言葉遊びとメッセージが上手にミックスされていて、実にテンポがよく、最後にはホロリとさせる出来。
ひとに施しをすると気分が悪くなるほどのケチの棺桶屋三太(勘三郎)が、鼠小僧のまねごとをする。ニセモノだけど、「鼠小僧」というだけで本物になっちゃう。看板とはいったい何? 未亡人お高(福助)の家で、善人の皮をかぶった與吉(橋之助)と、大衆の人気を気にする大岡忠相(三津五郎)、そして三太がハチアワセをする場面は、抱腹絶倒。

それ以外で印象に残ったのは、昼の部、操り三番叟で勘太郎の三番叟がほんとにマリオネットみたい。野崎村のお光の福助は、いじらしい娘がときどき遣り手ババアふうに見えてしまうことが前半ちょっとあってちょっぴり残念。身替座禅の勘三郎は、なかなかやんごとない恐妻家ぶり。この夏に見た、亀次郎の右京とはまた全然違って、三津五郎の玉の井とともに、上質なユーモア。

夜の部は橋之助の濡髪長五郎が思いのほかよかった。この人の口舌をこんなにスッキリ聞けたのは初めてのような気がする。雪傾城の芝翫は登場するだけで、舞台全体がハッシとしまって、その存在感に感動♪

 (昼の部)

一、操り三番叟
             三番叟  勘太郎
              後見  松 也
              千歳  鶴 松
               翁  獅 童


二、新版歌祭文   野崎村
              お光  福 助
              お染  孝太郎
            後家お常  秀 調
              久作  彌十郎
              久松  橋之助


三、新古演劇十種の内 身替座禅
            山蔭右京  勘三郎
            太郎冠者  染五郎
            侍女千枝  巳之助
            侍女小枝  新 悟
           奥方玉の井  三津五郎


四、大江戸りびんぐでっど
              半助  染五郎
              お葉  七之助
            大工の辰  勘太郎
           根岸肥前守  彌十郎
            遣手お菊  萬次郎
             丁兵衛  市 蔵
             与兵衛  亀 蔵
             佐平次  井之上隆志
           紙屑屋久六  猿 弥
          和尚実は死神  獅 童
          石坂段右衛門  橋之助
            女郎お染  扇 雀
           女郎喜瀬川  福 助
             四十郎  三津五郎
              新吉  勘三郎

夜の部

一、双蝶々曲輪日記  引窓
  
    南与兵衛後に南方十次兵衛  三津五郎
           濡髪長五郎  橋之助
            平岡丹平  秀 調
            三原伝造  巳之助
             母お幸  右之助
              お早  扇 雀


二、御名残押絵交張 雪傾城
              傾城  芝 翫
           役者栄之丞  勘太郎
         芝居茶屋娘お久  七之助
            新造香梅  児太郎
           雪の精 奴  国 生
           雪の精景清  宗 生
           雪の精 禿  宜 生


三、野田版 鼠小僧
           棺桶屋三太  勘三郎
              お高  福 助
              與吉  橋之助
           大岡妻りよ  孝太郎
            稲葉幸蔵  染五郎
          目明しの清吉  勘太郎
             おしな  七之助
             さん太  宜 生
            與惣兵衛  井之上隆志
              凧蔵  猿 弥
          辺見勢左衛門  亀 蔵
             独楽太  市 蔵
           番頭藤太郎  彌十郎
             おらん  扇 雀
            大岡忠相  三津五郎

クドカンの芝居は、たとえていえば、吉祥寺のこの有名な湯村輝彦のフンドシマンのようなイメージ。
歌舞伎座さよなら公演「12月大歌舞伎」_c0155474_23111783.jpg
  
歌舞伎座の左隣が壊されてガランドウに。
歌舞伎座さよなら公演「12月大歌舞伎」_c0155474_23125370.jpg


by sustena | 2009-12-26 23:15 | Theatre/Cinema | Comments(2)
Commented by ken_kisaragi at 2009-12-27 00:10
野田秀樹 は遊眠社の頃のイメージしか無いのですが・・・偉くなられたものです。
しかし痺れますね!フンドシマンではありません(笑)タイル張りの古館であります。
Commented by sustena at 2009-12-27 22:17
駒場で、「走れメロス」を見たときのインパクト、まだ思い出します。このタイル張りは、いままで陰に隠れて見えなかったんですよ。早晩取り壊されてしまうのはなんとも残念だけど、こんな状態のままこの銀座で生きながらえることは不可能だからなぁ。


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