2009年 01月 21日

「ランドスケープ───柴田敏雄展」

東京都写真美術館で、柴田敏雄さんの「ランドスケープ」と題した展覧会を見てきた。

柴田さんは東京芸術大学で油絵や版画を学んだあと、ベルギー留学中に写真制作をはじめ、帰国後の1980年代に、ダムやコンクリートに覆われた風景を中心に写真を撮っている。92年には木村伊兵衛写真賞を受賞。

今回展示されていたのは、80年代前半の初期のモノクロ作品から、最近のカラーのものまで、74作品。

ダムや崖の崩落を食い止める構造物の一部を、8×10の大型カメラで撮る。水のひとつひとつのしぶきさえ写しだしてしまうと思えるほどに克明だ。そして大のばしされた写真の存在感。これがもし、キャビネほどの写真だったら、なんだ落石止めか、と思ってしまうのに、大きいと、こんなにも美しいものだったろうかと、そのコンポジションに圧倒されてしまう。連続する幾何学模様の発見。コンクリートの切り取り方!

「土木工事はアートシーンにおける規模の大きな造形行為」と柴田さんは記す。自然と対峙する人工物をつくりあげてきた人間の力と、自然の力とが拮抗する美しさがある。
ダムから流れ落ちる水は、まるでイッセイミヤケのプリーツのようだった。コンクリートの突起がずっと並んだ山肌は、まるでおろしがねか、大仏さまの頭みたい。

アメリカの超大型ダムとして名高いグランド・クーリーダムを見下ろすように撮った写真。ダムの壁を水が伝い落ち、向こうには谷が見える。でも、流れ落ちるのではなく、天井に向かって立ち上っていくようでもあった。

ずっとモノクロで撮ってきた柴田さんだが(モノクロは虚構の世界を構築できるが、カラーだと、現実の色を無視できないので、理想のイメージが作りづらいというのがその理由だったとのこと)、「落としてきてしまった風景が気にかかる」と、2006年ごろよりカラーの写真も撮りはじめる。
その色合いが、先日なくなったアンドリュー・ワイエスのようだった。「発色現像方式印刷」というのがどんな特徴があるのかよくワカラナイけれど、本当に絵画みたいで現実感がないのだった。大きな大きな襖絵のような感じも。

会場で配布される作品リストのリーフレットに、柴田さんが大判カメラで写している後ろ姿が載っていた。撮影ポイントをこれとイメージして、大判をデンと構えて、どれくらいの時間がかかるのだろう。デジカメでホイッと写しているのとは、天と地ほど違うのだった。
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by sustena | 2009-01-21 21:10 | Art/Museum | Comments(6)
Commented by sa55t at 2009-01-21 21:51
柴田敏雄のカラー!!チョット絶句東京。
自慢して良いですか?彼から新潟の土留めの写真を以前頂きました。家宝にしてます。
彼の展示で一番ぐっと来るのがバイテンのコンタクトプリントですね。
至上のクオリティー。今回あったかどうかは分かりませんが・・・・。
Commented by sustena at 2009-01-21 23:43
なんとうらやましい・・・。今回あった作品で新潟のものは、北魚沼郡湯之谷村の、たしか道路脇の斜面に砂袋がいっぱいさがっているもの。それにしても、いったいどんなぎじゅつでもって、プリントするのか、とタメ息つきながら見ました。
Commented by sa55t at 2009-01-22 01:13
まさにその湯之谷村の砂袋の土留めです。
砂袋の銀色が艶めかしい。
Commented by sustena at 2009-01-22 12:06
おお!家宝ですね。あんな大きなプリントを飾って似合うおうちに住んでみたいなぁ。
Commented by sa55t at 2009-01-22 14:52
露出した壁がありません(泣)
保管してあるだけです(大泣)
Commented by sustena at 2009-01-22 23:56
美術館でも飾ると劣化しますから~。私は展覧会のチラシを額装しました。これでガマンです。


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