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2008年 12月 05日

増山たづ子写真展『遺されたネガから』

c0155474_022232.jpg新宿のクライアントに寄ったあと、コニカミノルタプラザで開催中の、増山たづ子写真展『遺されたネガから』を見た。

増山たづ子さんは、1917年生まれ。今年5月に完成した日本最大の徳山ダム(岐阜県)建設のために水の底に沈んだ故郷を撮り続けた女性で、2006 年3月に88歳でなくなった。

彼女が昭和52年から撮り始めた村の写真は実に厖大なもので、7万コマのネガが残されていたという。その一部は本になったりもしたから、ご覧になったひとも多いのではないだろうか。

この写真展は、遺されたネガの中から村の人たちの生活を中心に、未発表の約100点を選んだもの。増山さんの撮影している様子やインタビューの入ったビデオも流れていた。

入り口で、村の3人を増山さんが道路に横になりながら撮っている写真が目に飛び込んでくる。こんなふうに声をかけ、すてきな表情をとらえてきたのだ。毎日見ている風景へのいとおしさが詰まっている写真ばかりで、見ていて涙が出ちゃった。

彼女の愛機は,コニカのC35とビッグミニ。昔流に言えばバカチョンカメラである。でも、どんな名機をもってしても、こんなすてきな表情は決して撮れなかったにちがいない。

農作業の合間に、湧き水を葉っぱで飲む夫婦、川でイモ洗いをしている主婦、学校のこどもたち、大根を干している風景、冬の雪の中のひまわり……。増山さんは、犬にも、木にも、花にも、「元気か」と声をかけて撮っていたという。

立ち退き交渉が終わり、一人また一人と住み慣れた家を離れていく。出て行くひとを見送る目、そして、主のいなくなった家を燃やす火。写真から、無念さが伝わってくる。

「父ちゃんに見せないかん」と、戦場で行方不明になり帰って来ない夫に、故郷の姿を見せなければと撮り続けていた増山さん。ダムの完成を見ることなく、この世を去った。

コニカミノルタプラザは、いつになく大勢のひとが、写真に見入っていた。

5年ほど前、市町村合併で名前がなくなる北御枚村を写真に撮ろうと、村人たちにカメラを渡して写真展を開催した先生に話をうかがったことがある。そこで暮らす人にしか撮れない風景がある。村の名前がなくなっても、風景は変わらないかもしれない。でも確実に失われる何かがある。それを、記録と記憶にとどめておきたい。そんなことをおっしゃっていたのを、写真展を見て思い出した。

写真はそのときに撮影した村の写真。DiMAGE7i
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大勢の村人が参加した写真教室
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by sustena | 2008-12-05 00:02 | Art/Museum | Comments(8)
Commented by sa55t at 2008-12-05 00:41
いやぁ、以前コニカで見たとき会場で号泣してしまいました。
増山さんは静かに、声を出して泣いている私を優しく見ていました。
確かこの年(かな)、木村伊兵衛賞にノミネートされましたが、実績のない素人と言うことで選に漏れたそうです。伊兵衛賞はどうも若い写真家功労賞的なところがありますからしょうがないかも知れません。
Commented by esiko1837 at 2008-12-05 06:02
写真を見た人たちは、みんな泣いちゃうでしょうね。
サステナさんのこの紹介を見ただけで、私は涙が出てきましたから。
ふるさとが消えてしまう喪失感は、愛する人を失う喪失感と同じようなものだと思います。
田んぼの写真、うちの茶の間から見える景色かと思いました。
増山さんですが、父ちゃんに見せるために撮り始めたとのことですが、でもきっと撮っているうちに写真が大好きになっていったのではないでしょうか・・・きっとそうですよね。
Commented by みー at 2008-12-05 15:54 x
はじめまして。こちらのブログは価格comからとんできました。
sustenaさんの写真が好きで、お気に入りに入れてちょこちょこお邪魔してました。本日の日記を読んだとき「もしかして…」と思いました。
以前、フジテレビの「エチカの鏡」で観たおばあちゃんだったのです。何気なく観ていましたが、おばあちゃんの撮った写真が、強烈に印象に残っていました。だから、写真展が開催されていると知り嬉しくなってしまいました。ありがとうございます。
幸い、都内に住んでいるため写真展に行けそうです。ゆっくり見たいので、平日を狙って行ってまいります。
Commented by sustena at 2008-12-05 21:25
みーさん、こんにちは。平日なら、じっくり見ることができるのでは?と思います。私は、時間がなかったので、ビデオは半分ぐらいしか見ることができませんでした。でも増山さんが、自分で撮った写真を見せながら、「ほら、あんたはこんなに美人」などと言ってる風景、みんなが幸せになるダムなら、故郷のなくなる寂しさもガマンしなくちゃと言ってるシーンなど、滂沱でありました。
sa55tさんも号泣組でしたか。木村伊兵衛賞の話は知りませんでした。あの賞は尖ってなくちゃ、的なところがありますものね。増山さんの写真は、賞には漏れたかもしれないけれど、写真の原点だなぁという感じがしました。この展覧会、私が行ったときは、年配組と比較的若い男性が多かったですね。
esiko1837さん、増山さんのコニカのカメラは、ずこく幸せモノだったと思います。
Commented by みー at 2008-12-05 21:57 x
sustenaさん、お返事ありがとうございました。8日に、行ってみようと思います。ビデオも流れているんですね。これは私も号泣組に入りそうな予感です。月曜日がとても楽しみです。
Commented by nuts-co at 2008-12-05 22:23 x
私も見にいこうかなと思います。やっぱり月曜かな。で、やっぱり泣いちゃうのかなあ。とにかく見にいってみよう。コニカミノルタプラザ、初めてだなあ。
Commented by みー at 2008-12-09 18:56 x
こんばんは。写真展、行ってきました。ビデオも全部、見ました。ビデオを見ながら、ハンカチを口に当てているひともいらっしゃいました。
私は桜の写真を見たとき、泣いてしまいました。雪のように舞い散る桜と、その隣にあるブルドーザー。そして、燃やされる家。それを見守る村の人の背中。手を振る老夫婦。
とても素敵な写真展でした。ショーケース越しですが、たづ子さんのカメラも見れて、なんだかたづ子さんを身近に感じることができました。
Commented by sustena at 2008-12-09 22:52
桜の写真も覚えています。どんな気持ちで撮ってらしたのでしょうね。たづ子産のカメラ、存在感りましたよね。いまのデジカメがなんだか薄っぺらに見えてしまいます。


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